ロッキーマウンテンに登りたい!!
念願叶い、ホストファミリーに連れて行ってもらった。
ハイキングへ。
毎週のようにハイキングをしているデール(父)とジャッキー(母)。ジャッキーの友達、キャンデス。私、ポール(息子)、ポールと私の友達、ジェラットの6人で行った。
車でバンフ方面に1時間、カナナスキスにあるMt.Allanを目指す。
標高2829メートル。
「the highest maintained trail in Canadaを30キロ、ハイキングする。景色がとっても綺麗なの」
との言葉を聞いて、結構長い距離だなぁ、でもハイキングだし大丈夫だろう、と気楽に考えていた。
朝9時45分、ハイキング開始。
森林の中を歩く。10分後、傾斜がきつくなった。ものすごく。
そこで気づいた。これ、ハイキングじゃない。
いわゆる日本人として想像する「ハイキング」とは訳が違った。
大学の登山サークルで、3年間3000メートル級の山に登ってきたが、
それに匹敵、あるいはそれを超える辛さだ。
私は今、登山をしているんだ。
ジャッキーとキャンデスが殺人的な速さで歩いていく。
カナダでハイキング初体験の私とジェラットは、みんなから置いていかれる。
「もう戻ろう。車で待っていよう」と息絶えだえに話し合った。
それを伝える機会をなかなか見つけられず、必死に付いていった。
気づくと、私たちにあわせゆっくり歩いてくれたデールと3人が取り残され、
先頭の3人の姿が見えなくなっていた。
これって、危険じゃないのか。
道の横の土が掘り返されていて、「クマがやったんだよ」
と平然と言うけれど、確かロッキーでは、クマ対策として、6(7?)人以上で登山しなければいけないって決まりがなかったっけ。
実際、ジャッキーは何回もクマに遭遇したことがあるそうだ。
そうじゃなくたって、一つのグループが離れ離れになって山を歩くなんて、考えられないことだ。
何とか3人に追いつき、同時に森を抜け、視界の開けたところに出た。
日本の山とは違う、地層が綺麗に見える山々が目前に迫り、思わずため息が出る。綺麗だ。
美しい景色を見られれば、疲れを忘れられる。
もう7月の終わりだというのに雪がちらつき、マウンテンチキンがいて、森林限界は突破したが色とりどりの花が咲いている。
先頭集団に入り、稜線を歩き、ちょっと危険な岩場を歩き、
2時30分、登頂。(おとといお酒の中に水没したカメラがついに動かなくなり、写真は撮れず)
すぐに来た道を引き返す。
30分後、山頂まで来られなかった、デール・ジェラットと会い、ランチ。
食後、キャンデスを先頭に下山を始めた。
キャンデスは20代の女の人。
ジムに週5回通い、競技カヌーをするだけあって、驚くほどの健脚の持ち主だ。
ジャッキーも、54歳の女性とは思えないほど強い。
結局、キャンデスが一人ですたすた歩き、
ジャッキー、ポール、私が後を追う。
途中雨が降り出し、気温が7度まで下がった。
午後6時、下山。
車2台に分乗して来たのだが、後の二人がいつ降りてくるか分からないので、キャンデスに先に帰っていてもらい、もう一つの車を温め、着替えて3人で待った。
だが、7時を回ってもこない。
心配していてもたってもいられなくなったジャッキーが周辺を探しに行った。
少しして険しい表情で戻ってきたジャッキーは、レインコートと登山靴に着替え、本格的に山を登って探しに行った。「寒いだろうから」と彼らの着替えを持って。
7時40分、デールとジェラットの姿が見えた。
だが、ジャッキーと一緒ではない。
ポールが、「ジャッキーと一緒じゃないのか?」とデールに聞く。
「見るからに、一緒にいないだろう!!いつ出かけたのか?」
「37分前だ」
「Fu*k」デールは乱暴に車のドアを閉めた。
デールとジェラットは、足早に元来た道を引き返した。
大嫌いなハイキングに行かせられ、その上デールのぶっきらぼうな言動に腹を立てたポールは無言になり、眠りについた。
私は一人でおろおろしていた。
時々ポールを起こし、「ジャッキー大丈夫かなぁ、どこまで行っちゃったかなあ」と訴える。
「She will be fine」と平然とした様子のポール。
家族だよ。心配じゃないんだろうか。
ジャッキーが探しに出かけてから1時間半、登山道入り口に、3人の姿が見えたときは、ほっとして力が抜けた。よかった、無事で。
どうやら、入り口に近いところに一つだけある分岐点で、二人が反対方向に曲がってしまったため、ジャッキーとすれ違いになったのだという。
帰りの車中、
不機嫌なポール。
申し訳なさそうなジェラット。
「一人で山の中でどうしようかと思った。悪夢のようだった」と震えるジャッキー。
ジャッキーの真剣に話を聞き、同情する私。
「迷うつもりはなかったんだ」と仏頂面のデール。
その後行ったレストランでは、ぎすぎすした雰囲気で、あまりおいしくなかった。
「山を決してunderestimateしてはいけない」
ジャッキーがしみじみと言った言葉。
毎週山に行く者の言葉としては、遅すぎる気もするが、命を落とす前に分かって、よかった。
ちなみに、
マウンテンクライミング=ロープや道具を使って直角に登ること
ハイキング=日本でいう登山
ネイチャーウォーク=日本でいうハイキング
だそうだ。